LINEで、友だちからこんなメッセージが届く——という手口が広がっています。
PayPayの送金限度額が切れちゃってさ。💦
77000円、代わりに払ってもらえない?
明日の朝には返すよ。
これはLINEアカウントの乗っ取り詐欺です。友だち本人ではなく、その人のアカウントに入り込んだ第三者が、友だちリスト全員に同じ文面を送っています。
やっかいなのは、本物のアカウントから届くことです。名前もアイコンも過去のトーク履歴も、すべて本物。画面をどれだけ眺めても、偽物である証拠は出てきません。
この記事では、なぜこの手口が成立するのかという仕組みの話と、自分のアカウントを乗っ取られないための設定を整理します。「引っかからないように気をつける」ではなく、構造的に成立させない方向の話です。
✅ 先に結論
- LINE上で本人確認をしようとしても無意味。返信するのは犯人です
- 確認方法は電話一択。それも、トーク画面の番号ではなく自分の電話帳から
- 自分を守る設定は「ログイン許可」をオフにするだけで、ほぼ完結します
- 乗っ取られて困るのは自分ではなく友だち全員。だから設定は「他人のため」にやる
なぜ本物のアカウントから届くのか
LINEはスマホ以外の端末からもログインできる作りになっています。パソコン版・iPad版があるのはそのためです。
つまり、メールアドレスとパスワードさえ手に入れば、犯人は自分のパソコンからそのアカウントに入れるということです。スマホを盗む必要も、ウイルスを仕込む必要もありません。
入られてしまえば、そこから先はすべて本物として動きます。友だちリストも、過去のトークも、犯人から丸見えです。だから「昔の思い出で確認しよう」も通用しません。答えはトーク履歴に書いてあります。
パスワードはどこから漏れるのか
入口は、だいたい次の3つです。
- 偽のログイン画面に自分で入力してしまう。「アカウントが停止されます」「本人確認をお願いします」というメールやSMSのリンクから、本物そっくりの画面へ誘導されます。これが最多です
- 他のサービスから漏れたパスワードの使い回し。まったく別のサイトが情報漏えいを起こし、そこで使っていたのと同じパスワードをLINEでも使っていた、というパターン
- 単純すぎるパスワード。誕生日や電話番号など、総当たりで破れるもの
1と2が圧倒的です。つまり「怪しいリンクを踏まない」と「使い回さない」の2つで、原因のほとんどが消えます。
この文面がよくできている理由
冒頭の文面、改めて読むと計算され尽くしています。
| 要素 | 狙い |
|---|---|
| 77,000円 | 高すぎず安すぎない。100万なら断られ、1万なら儲からない |
| PayPayの送金限度額 | 実在する仕組み。嘘だと即断できない |
| 明日の朝には返す | 「あげる」ではなく「貸す」。心理的な負担を下げる |
| 💦 の絵文字 | 機械的な文章に見せない。いつもの口調らしさ |
| 代わりに払って | 「お金を貸して」より依頼が小さく聞こえる |
ここを踏まえておきたいのは、この手口に引っかかるのは判断力の問題ではないということです。「友だちが困っている」と認識した時点で、人は助けようとします。その反応自体は正常で、正常な反応を利用しているのが相手です。
だから対策は「注意深くなる」ではなく、「お金の話が出たら必ず電話」という機械的なルールを1つ持つことになります。判断を挟まない形にするのが確実です。
確認方法は電話一択。ただし番号に注意
- 🚫 LINEで「本人?」と聞き返す → 犯人が「本人だよ」と返します。無意味です
- 🚫 合言葉・思い出で確認する → トーク履歴を読めるので答えられます
- 🚫 トーク画面に書かれた番号にかける → 犯人の番号です
- ✅ 自分の電話帳に登録済みの番号にかける → これだけが有効です
「携帯を機種変更中でLINEしか使えない」と言われたら、それは電話をさせないための一文だと考えて構いません。同様に「誰にも言わないで」は、家族に相談させないための一文です。
相手が電話に出なければ、朝まで待つ。それで失われるものは何もありません。
「乗っ取り」ではなく「なりすまし」のパターンもある
近年は、アカウントに侵入せずそっくりの別アカウントを新規に作る手口も増えています。
| 乗っ取り型 | なりすまし型 | |
|---|---|---|
| どこから来る | 本物のアカウント | 新しく作られた別アカウント |
| 最初の動き | いきなりお金の話 | 「携帯変えたので登録し直して」と友だち申請 |
| 見分け方 | 画面では不可能 | すでに友だちの人から再申請は来ない |
| 被害の広がり | 友だちリスト全員 | 申請を承認した人だけ |
なりすまし型は見分けやすいのが救いです。すでに友だちになっている相手から、もう一度友だち申請が届くことはありません。「登録し直して」と言われた時点で疑ってよく、ここでも確認は電話です。
自分のアカウントを守る設定
乗っ取られて金銭的に困るのは、自分ではなく友だちのほうです。この設定は自衛ではなく、他人に迷惑をかけないための作業だと考えたほうが実態に合っています。
① 「ログイン許可」をオフにする(これが本命)
ホーム → 右上の歯車(設定)→ アカウント → ログイン許可 をオフ。
これで、スマホ以外の端末からのログインそのものが拒否されます。侵入経路を塞ぐので、仮にパスワードが漏れていても入られません。
デメリットは、パソコン版・iPad版のLINEが使えなくなることだけです。スマホのLINEは今までどおり動きます。使う予定がないなら、オフが正解です。必要になったらその場で戻せます。
② パスワードを使い回さない
設定 → アカウント → パスワード から変更できます。
他サービスと同じものを使っていると、そちらの漏えい1件でLINEまで連鎖します。覚えられないなら、スマホに最初から入っているパスワード管理機能に任せてしまうのが現実的です。
③ LINEを名乗るメール・SMSのリンクを開かない
「アカウントが停止されます」「不正ログインを検知しました」といった文面で、本物と見分けのつかない偽ログイン画面に誘導してきます。ここで入力した瞬間に終わりです。
LINEに関する用事は、必ずLINEアプリを自分で開いて行う。メールやSMSのリンクからは入らない。これを徹底するだけで、最大の入口が閉じます。
👉 同じ「本物そっくりの画面で焦らせる」型の手口は、パソコンにもあります。警告音が鳴り止まないサポート詐欺の対処法もあわせてどうぞ。
乗っ取られてしまった場合
順番が大事です。まず入口を閉じ、それから知らせます。
- パスワードを変更する(設定 → アカウント → パスワード)
- 「ログイン許可」をオフにする。これで、犯人が使っている他端末のセッションが切れます
- 友だちに知らせる。ただし乗っ取られたアカウントからでは信用されないので、電話や別の手段で
- LINEに通報する。該当のトークルームから通報できます
- 自分のスマホからログインできなくなっている場合は、LINEの問い合わせ窓口から復旧を申請します
⚠️ アプリを削除して入れ直すのは避けてください。トーク履歴が消えるだけで、乗っ取り自体は解決しません。先に上の1と2です。
お金を渡してしまった場合
- ギフトカードの番号を送った → カードとレシートを捨てない。未使用なら発行元で止められることがあります
- 送金・振込をした → すぐに決済事業者や銀行へ連絡
- 相談先 → 消費者ホットライン「188」/警察相談専用電話「#9110」
スクリーンショット、送金の記録、相手のアカウント情報はすべて残しておいてください。相談時に必要になります。
まとめ
- 本物のアカウントから届くので、画面では見分けられない
- LINE上での本人確認は全部無効。電話帳の番号にかけるのが唯一の手段
- 侵入経路は偽ログイン画面とパスワードの使い回しがほぼすべて
- 防御は「ログイン許可」をオフにするだけでほぼ完結する
- ルールは1つ。LINEでお金の話が出たら、返事の前に電話
この手口が厄介なのは、技術ではなく人間関係を突いてくるところです。セキュリティソフトでは防げません。だからこそ、判断を挟まない機械的なルールを1つ決めておくのが、いちばん効きます。
❓ よくある質問(FAQ)
Q. 本物のアカウントから来ています。本当に詐欺ですか?
A. 本物のアカウントから届くのが、この手口の特徴です。第三者がそのアカウントにログインして送っているので、名前・アイコン・トーク履歴はすべて本物です。画面から偽物と判断することはできません。
Q. 既読をつけたり、メッセージを開いたりしても大丈夫ですか?
A. 問題ありません。開いただけ、既読になっただけで金銭を取られたり端末を乗っ取られたりすることはありません。返信せず放置して構いません。
Q. LINEで「本人ですか?」と聞いてはいけないのはなぜ?
A. 返信してくるのが犯人だからです。「本人だよ」と返ってくるだけで、確認になりません。過去のトークも読めるため、思い出や合言葉での確認も突破されます。電話以外に方法はありません。
Q. 「ログイン許可」をオフにすると不便になりませんか?
A. スマホのLINEは通常どおり使えます。影響はパソコン版・iPad版が使えなくなることだけです。使っていないならオフが推奨で、必要になった時点でオンに戻せます。
Q. 「携帯を変えたので登録し直して」と友だち申請が来ました
A. なりすましの可能性が高いです。すでに友だちになっている相手から、再度の友だち申請が届くことはありません。承認する前に電話で確認してください。
Q. 乗っ取られたら、まず何をすればいい?
A. ①パスワード変更 → ②「ログイン許可」をオフの順です。オフにすると他端末のセッションが切れ、犯人を締め出せます。そのうえで、電話などLINE以外の手段で友だちに知らせてください。アプリの再インストールは、履歴が消えるだけで解決になりません。


